こだわり抜いた本編
武市
PVもそうなのですが、撮影(※映像の仕上げ工程)スタッフさんが雰囲気良く綺麗に撮って下さり、美術・色彩スタッフ、音楽も「青春モノらしいちょっとふわっとした明るい感じ」を作って下さいました。
実は色彩設計さんも原作ファンで、参号先生の塗っている色をアニメでも再現出来るように凄く頑張って下さったんですよ。
参号
そうなんですか! 私の100倍綺麗でしたよ(笑)。
――武市監督からスタッフの方に、リクエストされたことはありますか?
武市
スタッフの皆さんにはシーンごとにイメージを伝えていましたが、特にアニメのキャラデザさんにお願いしたのは、身体の対比です。才川と佐山の体格差とか手のゴツゴツ感の差ですね。画面で観ただけでも分かるようにしてほしいって話をしました。
参号
めちゃめちゃ萌えました。体格差。
佐山と才川のキャラクターデザイン。猫背になっている所も再現されている
武市
才川は背筋が伸びてるとか、佐山はちょっと曲がってるとか。立ち絵も凄くこだわって描いてもらいました。
参号
猫背のカーブが素晴らしかった。
武市
「肌の色も、佐山の方が白いと思うんです。並んだ時にも二人の差があると嬉しい」と話をして、二人に関しては凄くこだわってもらいました。
参号
何度もPVを観てるんですけど、佐山の色素が薄いのが分かる。「赤ちゃんみたいだな」「なんでこんなマシュマロみたいな肌しとるん!?」って荒ぶる心のままツイートをしようとして、ん"~~!って堪えたんですけど(笑)。質感が柔らかくてサラサラなんだろうなって思いました。こだわり、ありがとうございました。
武市
アニメはまず、作画の打ち合わせでコンテを読みながら、シーンの意図やキャラの関係性を私が説明して、原画さんたちが、「じゃあ、今こういう関係だったら、お互い目線は合わせてるよね?」とか「この動作の時はこういう感情かな?」みたいな細かいニュアンスをコンテからさらに足して、アニメーションにしていくんです。
そのなかで、特にこだわりたい重要なシーンは、BL好きの原画さんにお願いして、キャラクター同士の関係を伝えた上で表情や芝居を細かくつけてもらったり、「このシーンはこれが良いですよね!きゃ~~」みたいなテンションで打ち合わせをしたり…。
私のコンテに描き足りないところを、色々なスタッフさんに提案していただく!という形で進んでいきました。
キャラクターの仕草を相談した時も、作画監督さんがBL作品も分かる方だったので「男の子同士だからもっとこういう動きになるんじゃ?」と提案してくれて「それで!」と決まっていったり。
私は出来るだけ「いちファンの気持ち」になって「皆が観たいところ」をお伝えするようにしてしました。
でも私、基本的に擬音が多いので「ぱぁ~って感じで!」とか言ってしまって(笑)。でもスタッフの皆さんが汲んでくださりすごくいい仕上がりになりました。
――きっとファン心とBL心が分かるスタッフさんだからこそ、意思疎通ができたんですね。
武市
そうですよね。アフレコ現場でも、音響監督さんが二人の関係性を踏まえて方向性を作って下さって、現場でも打ち合わせをしながら進めました。ドラマCDで既に演じてくださっていた声優さんも、キャラクターのことを深く理解されていたので、声優さんご自身から「このセリフはこういう感情ですよね?」と聞いて下さったり。
関わってくれたスタッフ全員が、それぞれにイメージを膨らませて確認をしながら作った結果が、本作です!
作品を好きな方が集まって下さってたので、打ち合わせも楽しかったですね。
――OAD本編で、特にイメージをお伝えしたシーンなどはありますか?
武市
私のなかでは、この二人の関係がどんどん近づいていくところ――初めは完全にシャットアウトしてツンツンしている佐山と才川の関わり方を大事にしていました。そこから段々と表情が変わってくるので。
中でも "視線" には結構こだわりました。どこを見てるとか、才川にポンって手を置かれた時にどこを見るかとか。「これは何気なく置かれたんだろうけど、手を置かれた佐山はその手を見るんじゃないかな」と思って、才川が去っていく際も才川の方向をすぐ見ちゃうんじゃなくて、ちょっと手を見てから視線で追う流れとか。上手く出てるといいんですけど(笑)。
参号
もう一回観ます。楽しみが増えた。
佐山の視線もしっかり絵コンテに書き込まれている