interview

「マスク男子は恋したくないのに」
OAD化記念インタビュー

原作者:参号ミツル・監督:武市直子

(以下敬称略)

interview

ミラクルを感じました

――アニメ化がついに解禁になりましたが、いかがでしたか?

参号ミツル

思っていた以上の反響でした!
発表の場が『フジテレビアニメラインナップ発表会2023』だったので、「数多くのラインナップの中に、一瞬だけ名前が出る」というのを想像して、見逃さないぞ!って構えてたんですけど、凄くしっかり紹介してくださって。
こんなに紹介して頂けると思っていなかったので驚きました。そのあと、手汗びちょびちょの震える手で、絵文字も入れられないまま告知のツイートをして、Twitterのタイムラインを見たときに、作品公式さんのツイートの数字が次々と伸びていったのに驚きました。まさか、Twitterのトレンドに載るとも思わなくて(驚)。

――日本トレンド6位くらいまで行っていたみたいですよ。

参号

凄い。生きてるうちにそんなことが起きたなんて(驚)。ミラクルを感じました。
みなさんに作品を愛していただけているのだなと思って、凄く嬉しかったです。

――アニメ化のオファーをもらった時、どんなお気持ちでしたか?

参号

最初、なんか変な声が出ました(笑)。ドラマCD化の時も、信じられない気持ちだったんですが「あ、ア、アニメ!?」って。今までいちオタクとして自分がBLCD、アニメにも触れて育ってきたので「自分の作品でそんなことあるか?」と信じられなくて。
元々はデビューやアニメ化を目指して描いたものではなく、趣味で描き始めた作品だったので、コミックスになった時も驚きましたが、子供の頃から漠然と憧れていたことが、思わぬ形とタイミングで叶ってしまった…。「うわぁ~夢が叶ってしまった~」と。走って、「みんな聞いて――!」って叫びたくなりました。

PVについて

――解禁されたPVでは、いざ自分のキャラが動いて喋っているのを観て、どういうお気持ちですか?

参号

完全にファン目線ですよね。「読んでた漫画が動いてる! すげー!」って思いました。ただのオタクなんで(笑)。
動いてるのを観て「生きてる、いる!」って嬉しい気持ちです(笑)。
でも、そういう形にしていただけるまで、読者さんや周りに応援していただける作品になってたんだなって感じました。これがビデオテープだったら擦り切れるまで観ます。ありがとうございます。

――何度もPVの感想をツイートされてますよね。見返すたびに萌えがある!と。

参号

本編のことをどれだけ隠してPVだけの情報に絞って言おうかと思いまして(笑)。

――佐山の髪の毛の話とか…

参号

そうそう。歩いて足を踏み出した振動で佐山の髪の毛がふわっふわってなって、色白でちょっと猫背のサラサラふわっふわの肌の男の子が歩いていたら、「わっさ~」と髪をくしゃくしゃにしてやりたいわなって。やったあとに、眉間に皺寄せてすごい睨まれるんだろうなって思ったら「はぁ~~たまらん!可愛いな~!」って思っています。

佐山の登校シーン

PVにもある佐山の登校シーン。髪の揺れや肌の質感まで伝わる

武市直子

その流れで切り替わった時に、女の子に普通にドンってぶつかられるところも私、好きです。

参号

私も好き! 「佐山、女子になんも言えねぇ~」みたいな佐山らしさがね(笑)。

武市

あそこは原画(※動きの基本になる絵を描く作画スタッフ)さんが上手で。ドンってぶつかられても何事もなかったかのように戻ってまた歩くという何気ない芝居ですが、動かすのが難しい部分を見事に作画にして下さっていて「おぉ~!」ってなりました。

参号

「こういう子いるいる!」って思いました。あれが、佐山の日常なんだろうな。

――映像になっている分だけ "佐山の日常" の解像度が高いですよね。

参号

学校の階段を登って歩いている、人混みの中を歩いている佐山を改めて観て、自分が描いているのに「あっ、そうだよね。日常生活をこうやっているんだもんな」って思ったら、実写の俳優さんを実際に見た時の「はっ!実在するんや…!?」っていう感じの感動がありました。
改めて「そうだ!高校生で、実際にここにいるんだな!」っていう認識を新たにしました。漫画を描いていると物語がメインになってくるので、日常を普通に送っている認識がつい抜けがちになるんですけど、自分達と同じ日常を送ってる男の子だっていうのをこのシーンで改めて感じましたね。

――短いPVでもたくさんの感動がありますよね。このお話を踏まえてまたPVを観ていただきたい!本編は買って頂かないと観れないのですが…。

参号武市

よろしくお願いいたします(笑)。

こだわり抜いた本編

武市

PVもそうなのですが、撮影(※映像の仕上げ工程)スタッフさんが雰囲気良く綺麗に撮って下さり、美術・色彩スタッフ、音楽も「青春モノらしいちょっとふわっとした明るい感じ」を作って下さいました。
実は色彩設計さんも原作ファンで、参号先生の塗っている色をアニメでも再現出来るように凄く頑張って下さったんですよ。

参号

そうなんですか! 私の100倍綺麗でしたよ(笑)。

――武市監督からスタッフの方に、リクエストされたことはありますか?

武市

スタッフの皆さんにはシーンごとにイメージを伝えていましたが、特にアニメのキャラデザさんにお願いしたのは、身体の対比です。才川と佐山の体格差とか手のゴツゴツ感の差ですね。画面で観ただけでも分かるようにしてほしいって話をしました。

参号

めちゃめちゃ萌えました。体格差。

佐山と才川のキャラクターデザイン

佐山と才川のキャラクターデザイン。猫背になっている所も再現されている

武市

才川は背筋が伸びてるとか、佐山はちょっと曲がってるとか。立ち絵も凄くこだわって描いてもらいました。

参号

猫背のカーブが素晴らしかった。

武市

「肌の色も、佐山の方が白いと思うんです。並んだ時にも二人の差があると嬉しい」と話をして、二人に関しては凄くこだわってもらいました。

参号

何度もPVを観てるんですけど、佐山の色素が薄いのが分かる。「赤ちゃんみたいだな」「なんでこんなマシュマロみたいな肌しとるん!?」って荒ぶる心のままツイートをしようとして、ん"~~!って堪えたんですけど(笑)。質感が柔らかくてサラサラなんだろうなって思いました。こだわり、ありがとうございました。

武市

アニメはまず、作画の打ち合わせでコンテを読みながら、シーンの意図やキャラの関係性を私が説明して、原画さんたちが、「じゃあ、今こういう関係だったら、お互い目線は合わせてるよね?」とか「この動作の時はこういう感情かな?」みたいな細かいニュアンスをコンテからさらに足して、アニメーションにしていくんです。
そのなかで、特にこだわりたい重要なシーンは、BL好きの原画さんにお願いして、キャラクター同士の関係を伝えた上で表情や芝居を細かくつけてもらったり、「このシーンはこれが良いですよね!きゃ~~」みたいなテンションで打ち合わせをしたり…。
私のコンテに描き足りないところを、色々なスタッフさんに提案していただく!という形で進んでいきました。
キャラクターの仕草を相談した時も、作画監督さんがBL作品も分かる方だったので「男の子同士だからもっとこういう動きになるんじゃ?」と提案してくれて「それで!」と決まっていったり。
私は出来るだけ「いちファンの気持ち」になって「皆が観たいところ」をお伝えするようにしてしました。
でも私、基本的に擬音が多いので「ぱぁ~って感じで!」とか言ってしまって(笑)。でもスタッフの皆さんが汲んでくださりすごくいい仕上がりになりました。

――きっとファン心とBL心が分かるスタッフさんだからこそ、意思疎通ができたんですね。

武市

そうですよね。アフレコ現場でも、音響監督さんが二人の関係性を踏まえて方向性を作って下さって、現場でも打ち合わせをしながら進めました。ドラマCDで既に演じてくださっていた声優さんも、キャラクターのことを深く理解されていたので、声優さんご自身から「このセリフはこういう感情ですよね?」と聞いて下さったり。
関わってくれたスタッフ全員が、それぞれにイメージを膨らませて確認をしながら作った結果が、本作です!
作品を好きな方が集まって下さってたので、打ち合わせも楽しかったですね。

――OAD本編で、特にイメージをお伝えしたシーンなどはありますか?

武市

私のなかでは、この二人の関係がどんどん近づいていくところ――初めは完全にシャットアウトしてツンツンしている佐山と才川の関わり方を大事にしていました。そこから段々と表情が変わってくるので。
中でも "視線" には結構こだわりました。どこを見てるとか、才川にポンって手を置かれた時にどこを見るかとか。「これは何気なく置かれたんだろうけど、手を置かれた佐山はその手を見るんじゃないかな」と思って、才川が去っていく際も才川の方向をすぐ見ちゃうんじゃなくて、ちょっと手を見てから視線で追う流れとか。上手く出てるといいんですけど(笑)。

参号

もう一回観ます。楽しみが増えた。

絵コンテ

佐山の視線もしっかり絵コンテに書き込まれている

個人的な推しシーン

――参号先生に刺さったシーンはありますか?

参号

見せ場のシーンはもちろん全部めちゃめちゃ良かったんですけど、佐山が初恋の小林さんと再会したシーンが印象的でした。
才川に「あれ、知り合い?」って言われた時に、佐山が俯いて「知らない」っていう、あの一言が凄いリアルだったんですよ。
後ろめたさと後悔で潰されそうで、隣には好きな人がいて、もう目なんか合わせられるわけないし、今すぐ逃げ出したい気持ちで嘘をつくあの小さい声の「知らない」が観てて凄い苦しかったです。細かいところですみませんが…。

参号ミツル先生一押しのシーン

参号ミツル先生一押しのシーン。佐山を想うと胸がギュッとなります…。

武市

嬉しいです。あのシーンは声優さんの演技も凄く良くて。

参号

あと、武市監督のコメントで言及されていた「チラッと画面を通り過ぎるキャラ」について、気づいた瞬間、悲鳴を上げ通り越して倒れそうな気持ちでした(笑)。

――監督がこっそり入れてくださった"彼"ですね!

参号

絶対嬉しいですよ。

武市

ほとんど顔は見えないんですけど、一応おまけというか、プレゼント的な感じでこそっと。彼も応援してるんで…ファンの目線で言ってる(笑)。

参号

めちゃめちゃアガりました。

武市

良かったです。

参号

ありがとうございます。

――他の推しシーンはありますか?

参号

最後のクマを投げるシーンのあたり。
佐山が大きな声を出して乗り越えたあとに、「好きになってもらえて良かった」と言うのですが、そこの佐山の顔が、めちゃめちゃに可愛かった。
また最後の最後でタイトルにとある演出があって……もう、その場に倒れるかと思いました(笑)。エモ過ぎる。最初タイトルに[●]●●●●●●んですよね。●●してないし、●になってない。それが、「あ、[●]になったんだ~」って思って。あれは、アニメーションならではの演出ですね。キタ~!みたいな!(※本編でお楽しみください)

――武市監督の推しシーンを教えて下さい。

武市

私の好きなシーンは最後の方で才川が抱きついて「うれしい」って言うところ。

武市監督の推しシーン!

武市監督の推しシーン! 前後は本編にてご確認ください…♥

口をちょっとわなわなさせながら、喋っているシーン。
実はなかなか描くのも表現するのも難しく、原画さんに頑張ってもらった部分なんです。わなわなしながらも、ちゃんと喋る口をアニメで動かすのは意外に難しくって、あの時の表情を原画さんに凄くドンピシャで描いてもらい、動画(※原画さんの描いた基本絵の間(動き)を描く作画スタッフ)さんもそこを崩さず描いてくれて。
漫画の表情をそのまま表現させてもらったんですけど、綺麗にトレースして動かして頂きました。抑えきれない才川の気持ちがムワっと出て噛み締めているシーンだったので、観た時に(拍手しながら)スタンディングオベーションでした。
「良い表情です!ありがとうございます!」って気持ちでした。

原作に入れたかったシーンがOADで実現!

――OADのオリジナルシーンについて教えてください。「漫画本編ではやむなく入れるのを諦めたシーン」がアニメ化されているとのことですが。

参号

いくつかあるのですが、ひとつは才川視点の独白です。保健室でマスクを暴いた日の夜、才川が自分の部屋で佐山を思い出している…というシーン。
担当さんにはくどいほど言ってるんですけど、オリジナルシーンの才川がイケメンすぎて、夢思考を持っていなかったはずなのに、私の中に初めて夢思考が芽生えてしまいました。
才川夢女になってた(笑)。「こんなに格好良かった⁉」「口元よ…」「でも、才川は佐山のもんなんだよね。」って思ったら、あ"~って思いました。めちゃめちゃ格好良かったなぁ。

武市

自分が漫画のコマとコマの間を読むタイプなので、アニメではそこを入れていきたいなって思いました。尺の関係で入れられなかった部分もあるんですけど、アニメの方では才川の部屋で独白してるシーンや、才川側の目線、才川自身の言葉を脚本家さんに相談して入れてもらいました。

参号

ほかにも、ちょっとした自販機のシーンとか、色々あるのですが…。
特にお伝えしなきゃいけないのが、あの某トイレのシーンです。
今回のOADを買った方しか観られないであろう、絵付き!声付き!動き付き!の…。

――一人での某行為シーンですね……!

参号

そもそも才川に弄られてばっかりいるから、佐山の一人のって本編でも一度も出していないのですが(笑)。
なんで原作に入れられなかったかっていうと……本当は二人の恋が成就するまで、もっと寄り道しようと思っていたんです。
一人で趣味のまま連載を続けてたら、きっと二人がくっつくまでめちゃめちゃ長くて、20話くらいまでくっついてなかったかもしれないです(笑)。コミックス1巻を作る際には、編集さんのおかげで話を綺麗にまとめることが出来たんですけど、その「あったかもしれない寄り道」のひとつが今回の一人のシーンです。
原作4話で言うと佐山が舌を弄られてえづいてしまうところあるじゃないですか。才川はあれで開花してるし、佐山は気持ちが付いていく前に、触られて気持ちいいことを知ってしまって。
身体は反応するんだけど、気持ちがついていかない…みたいなエピソードをもっと入れようかなとなんとなく思っていたんです。
今回のOADでは、そこを垣間見れたなって思いました。ifの世界線を持ってきてもらったみたいな感じですね。「私、これ知ってる! 入れて大丈夫ですか!? やってもらえるのですか!? やったぁ!」っていうお得感もあり、めちゃめちゃ嬉しかったです。ありがとうございました。

武市

参号先生が色々オリジナルシーンのご提案をして下さって、脚本家さんも流れの中に綺麗にスッと入れてくれて、私も仕上がった脚本を読んで「あ~ここに入るのか、なるほど。この流れならいいですね!」ってなりました。

参号

年頃の男の子だからそうですよね。そりゃそうだよ~。

武市

そうなっちゃいますよね(笑)。

リスペクトしあう二人

――担当編集としては、同じくマスくまを投げた瞬間を見守る才川の彼氏感が格好良くて個人的に推しです。
マンガでは具体的に描かれていない絵なのですが、絶対にこういうポーズだっただろうなと。あのシーンを描いていただけてよかった!

武市

もともとは屋上のシーン(※原作8話)でちょうど終わる構成だったんですけど、「でもやっぱり佐山が才川に対してちゃんと自分の気持ちを言わないといけないんじゃないか!?」っていう話を脚本家さんとしていて。
そのためには小林さんが必要なんですが、そうすると最後のマスくまを投げるシーンまでやらなきゃいけないので、収録しきれないかも…と思ってたんです。
でも、どうしても「最後はお互いの気持ちをちゃんと伝えて終わって欲しい!」と脚本家さんに相談して、脚本家さんも「やっぱ入れなきゃダメですよね!」って言ってくれて、オリジナルシーンも挟みつつなんとか脚本を調節をしてもらい、映像編集さんにも尺の微調節していただいた結果、本当に素晴らしく纏まったなと。感謝しかないです。

参号

一冊分入っているんですもんね。素晴らしい。

――実は当初「1巻の内容をすべて才川視点でお届けする」というオリジナル脚本のご提案もいただいていたんです。それには2巻の内容も踏まえなければいけないので、やむなく変更したのですが、原作を読み込んで下さったからこそのご提案で感動しました。

参号

才川視点も観れる世界線もあればよかったのに(笑)。

――監督の原作リスペクトだけでなく、参号先生もかなり監督をリスペクトされていますよね。「アニメとして一番良い見せ方をしてほしいから、原作のことはあまり気にしないで下さい」と言ってくださって。

参号

オタクは観て「わー!」ってなりたい(笑)。観たいものを作って下さるだろうとなんとなくもうわかっていたから、良いようにしてもらえるのがベストだというのがあって、お任せしました! 素晴らしかったです。ありがとうございました。

武市

ずっと大丈夫かな?って思っていました(笑)。コンテを描いてるときは「良い感じになった!」って思っても、段々時間が経つにつれて「大丈夫かな?独りよがりでは?ちゃんと拾えてるんだろうか…?」と不安になって。

参号

ここ一番の顔も良いし、難しいことは考えずに一BLファンとして没入して楽しみながら観ていました。

武市

ありがとうございます。

参号

本当に楽しかったです。

武市

私の作り方として、自分もファンになって「なにが観たい」とか、「どういうのをやってもらえたら嬉しいかな?」って思いながらいつも仕事をさせてもらっています。今回もファン目線で、「こういうのが欲しい!」「ここは観たい!」「ここは必要だ!」って思う部分をピックアップしました。

参号

細かいシーンなんですけど、佐山の赤点の答案用紙を才川が高く掲げて、手を伸ばしても届かない佐山がめちゃくちゃ可愛くて大好きなんですよね。

武市

絶対、届かないっていう。「なんということを!?」みたいな(笑)。

参号

デフォルメもめちゃくちゃ可愛かったー! TwitterでもPVを観た方が皆さん作画を褒めていて嬉しかった!

デフォルメシーンも可愛い♥

デフォルメシーンも可愛い♥

作画のこだわり

――アニメ用のキャラクターデザインラフを参号先生が監修された際には、「こうすると佐山っぽいかも」というポイントをすごく丁寧に解説してくださいましたよね。

参号

「差し出がましかったんじゃないか?」って思っていましたが…。

武市

いえいえ! しっかりご監修頂いてたので「そうか、確かに!」って思いながら、キャラデさんにもそこを踏まえて修正をしてもらいました。

佐山描き下ろし資料 才川描き下ろし資料

参号ミツル先生によるキャラクターデザイン用資料

――参号先生が原作の作画で気を付けているポイントは、たとえばどういうところですか?

参号

佐山の髪型。あとは、武市監督が仰っていたように、手の大きさの差とか、体格差・肩幅の差ですね。
自分が描いているものにはっきりルールはなくて、割と感覚でやってるところがあるんですけど、いつも手元で見ているサイズ感・シルエットが、アニメでも凄く表現されていて単純に観て萌えました。
あと、意地悪な顔してる才川、めちゃくちゃ好きです(笑)。凄く良かった。好みでしたもん。保健室のシーンも、はぁ~これが夢、夢って。夢になっちゃう!だめっだめ!
私は保健室の壁!って思いながら…。

武市

私もああいう時は常に壁です(笑)。

参号

じゃあ、私は保健室の床!(笑)

BL好きスタッフが奇跡の集結

――武市監督はどんな経緯で本作の監督をして下さることになったんでしょう?

武市

巡り合わせのような感じなんですけど、以前違う作品の方で一緒にお仕事したことのある方から「武市さんってBL興味ありますか?」ってお声掛け頂いて、「おぉ!私でありますか!?」みたいな流れで(笑)。
今までお仕事では、あまりBL作品にガッツリ関わったことはなかったんですよね。でも「個人的には好きですが?(キリッ)」と。

参号

頼もしいー!

武市

とうとう来たか…!って思って(笑)。「受けます!」って言ったら後日、実際にご依頼いただけて、原作を読ませて頂いたら「あ~私の好きなツンデレですか!」ってなりまして。

参号

良かったー!

武市

イイネ!イイネ!って言いながら読んで、コンテも気合いを入れました。OADの収録枠(分数)が決まってしまっているので、限られた尺のなかでどれだけこの二人のことを知ってもらえるかな?と脚本家さんと相談しつつ進めました。原作を知っている人も知らない人も「良いな、この二人!頑張れ!」と幸せを願って見てほしい。そんな気持ちで作らせてもらいました。

――担当編集としても、お二人のBL萌えポイントが響き合ってるのを常に感じていました(笑)。よければ武市監督のBL遍歴を教えて下さい。

武市

私、遅咲きなんです。元々、絵は描くのが好きだったので描いていたんですけど、部活が運動系だったので、趣味の時間を作るのが難しかったのですが、高三で部活を引退してようやく自分の好きなものに没頭出来るようになって、そうすると周りにも絵を描いたり漫画やゲームが好きな人が集まって来るんですよね。面白い漫画を教えてもらっては「この二人の友情良いな~うむ!」って思いながら見ているとスッと同人誌が差し出されて(笑)。そこからちょっとずつ嗜むようになりました。

――BLUE LYNXの方々をはじめ、本作を制作くださったスタッフの皆さん、BLをお好きな方が多くて本当にご縁に恵まれていました。これって業界的には珍しいのでしょうか?

武市

そこそこBL好きはいると思うんですけど、ここまで綺麗に揃ったのはすごい偶然だと思うんです。私をはじめ、作画さん・プロデューサーさん・出版社さんと、BL好きな方がここまで上手く揃うことはなかなか無いので、私も顔合わせの時に「凄い揃ってる!」って思いました。

参号

凄い巡り合わせですね。

――お顔合わせのオンラインミーティングの時も、みなさんが好きなBL作品の紹介から始めるという、あまりない光景が思い出深いのですが。

武市

面白かったです(笑)。これでみんなで話し合ったら超楽しい会になりそうでした。

参号

腐女子会が出来ますね。

武市

お勧めはこれです!って、各々が持ち寄るみたいな。

参号

お気に入りの一冊を(笑)。

武市

プレゼンし合うみたいなね。

参号武市

(笑)。

――「マスク男子」は、本当にBLを好きな人が集ったからこそできた奇跡のような作品ですね!

マスク男子」ならではの表現――マスクを外す意味

――OADの中で、ファンの皆さんに注目してほしいシーンはありますか?

武市

屋上で佐山が一人ごちるシーンがあるんですけど、あそこで「好き」という言葉が思わず洩れてしまった……という部分です。独白でもなく、心の中でもなく、音で空気に出ちゃったっていうのを感じていただければと思います。
脚本段階ではモノローグ(心の中のセリフ)だったんですけど、絵コンテを描いていた時に、「これ、声に出るんじゃないかなぁ~」って思って。モノローグとどちらがよいかずっと考えていたのですが、アフレコの時にちょうど音響監督さんが「これって、どっちですか?」って聞いて下さったんですよね。
「絵コンテは、思わずポロって声に出しちゃったっていうイメージで描いたんですけど…どうでしょうか?」って相談したら、音響監督さんも「それですね!」と言ってくれて。
「じゃあ、マスクを外した生声でいきましょう!」ということになりました。
この作品では、心の中の声・マスク越しの声・マスク外した声で、意味が全部変わってしまうので。

――ドラマCDでもOADでも、佐山役の声優・小林祐介さんが実際にマスクの着脱をしながら収録してくださいました。本心を晒したり暴かれたりするさまをマスク(=心の蓋)で表す原作の機微を、声優さんも音響監督の方も完璧に把握して下さってましたよね。

武市

あのセリフはもう心の中でもなく、一人で屋上にいる時に思わず心の声が溢れちゃった…そういうセリフなんだと思いながら聴いて頂けると有難いです。

参号

マスクのON・OFFで「本音である・そうでない」という部分を、そこまで汲んで下さるのか!?と驚きました。一人で漫画を描きはじめたときは、実は無意識に表現していた部分だったのですが、そこを瞬時に汲み取ってくださって、さすがだなと思いました。

OADでもキーとなるマスコット『マスくま』

OADでもキーとなるマスコット『マスくま』。

参号

あと、見返した時に良いなって思ったのが、マスくまを投げるシーンです。
佐山が小林さんに向かって叫ぶ前に、才川が「大丈夫だ」って言う声音と、映像のテンポ。
言い終えた後に佐山が息を吐き出して落ちていく動きと、あの息と声が物凄くグッときたんですよね。「うわぁ~頑張ったね~~~! 佐山!」って思いました。もともと応援したくなる二人が、あそこでまたグッときました。
このシーンや、小林さんを「知らない」って言ったところ――そういう人間的な描写にも一緒に没入して楽しんで魅入っていただきたいです。
恋愛的な部分だけじゃなくて、人間の成長や、人間関係・心の動きといった人間的な部分でも、観てる側の心臓がぎゅってなるような素晴らしい映像にしていただけたなって思っています。本当に大感謝です。

武市

それだけ、原作が人の心を打っていたからだと思います。

参号

いえいえ! でもやっぱり、紙で見て脳内で音声を流すのとはまた全然違いますよね。グッとくる具合が違う。

武市

そうですね。声優さん達の息遣いも凄かったですもんね。

参号

相乗効果!

武市

全てがぎゅっと集まってました。

参号

アニメって凄い!

観て感じられたことが、観た方の全てだと思うので、一緒に楽しめたら良いな

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。

武市

アニメってキャラクターが動くじゃないですか。
「そこにいるよ!」って。もしかしたら、そういう感じの子がいるかもしれない!参号先生が仰ったように「髪の毛をわしゃわしゃってしたくなるような子」が歩いているかもしれない!って感じて頂ければって思ってます。
もっと、お互いに成長する二人を、これからも私は応援しています!
幸あれ!って思いながら観て頂きたい…けど、こっちからは何も言えないのと、観た人が感じたものが全てだと思っているので、想いが何か一つでも上手く伝えられていたら幸いです。自由に感じて楽しんで頂ければと思います。

参号

1巻分の内容を短い尺で、ちゃんと二人の恋が恋になるまで纏めるのって、本当に大変だったと思うんですよ。それを素晴らしい形にまとめていただき、観たかったシーンあれもこれも入れていただきました。
ファンの方が漫画で共感してくださった、コンプレックスや成長といったヒューマンドラマの部分を、アニメでは更に実感を伴って感じられると思います。
恋愛あり、共感あり、成長を応援してあげたくなるところも、原作では見られなかったアナザーエピソードもあり。本当に重箱みたいなアニメにしてもらえました。
私は本編を観終わったあと、「この二人の関係がまだ続いていくんだな~」っていう幸せな余韻と余白を感じたので、早く皆さんと共有したいですね。
アニメーションならではの演出で、心にくるものにしていただけたと確信を持って言えますので、一緒に楽しみましょう。
ファンの皆さんと一緒に楽しめたら、共感していただけたら良いなって思います。

――制作の裏側やこだわりを知ってからOADをご覧になると、新たな作品の魅力に気づいていただけるのではないでしょうか。
本作の反響次第ではさらなる夢に繋がるかもしれません。
皆さんが共感したシーンやご感想があれば、ぜひSNSで共有してくださいね!
この度は大ボリュームの貴重なインタビューを有難うございました!

↑TOP↑TOPへ
戻る